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配置転換・転籍・出向などの業務命令

業務命令には、必ず従わなければならないのか?
何に従い、従うべきなのか?拒絶してもいいのか?

業務命令とは、労働契約書や就業規則の内容に基づき、その労働者を管理監督する立場の人が指示する命令です。この業務命令に労働者は従わなければなりません。もし、正当な理由なく拒否するならば懲戒処分となることもあります。

Step1 職種の変更(配置転換)

「労働契約において職種が特定されている」場合

 就業規則に業務の都合による配置転換の定めがあったとしても、原則として労働者の同意がなければ、使用者は職種の変更を命ずることはできません。 特定の資格を活かす職種として契約したのに、合理的な理由がなく全く関係のない職種に配置した場合は、使用者の「権利の濫用」に当たり、その労働者は法律上、これに応じる義務はありません

 ただし、経営打開のための企業上の必要性が認められる場合で、従来から異動が行われていたり、配転で労働条件が有利になったりする場合には、異なる職種への変更であっても、正当な配転命令として、使用者が一方的に命ずることができるとされています。

 

「労働契約において職種が限定されていない」&「就業規則に業務上の都合による配置転換の定めがある」場合

 労働者は、その業務命令に従わなければなりません。
ただし、その配転命令が「権利の濫用」となる場合は、無効です。 業務上の必要性が認められない場合、あるいは他の不当な動機・目的がある場合、労働者に著しい不利益を与える場合には、その配転命令は権利の濫用として無効とされます。

 また、職種が限定されていなくても、医師、看護師、技術者、弁護士といった特殊な技術・技能・資格を有する者については、その職種に就くことを条件に雇用されたものと認められ、同意なくなされた配転命令が無効とされる場合もあります。

 

●配置転換に伴う賃金の減額については?

職種を変更したからといって、当然に賃金減額が許されるものではありません。賃金の減額は、会社の賃金制度がどのようになっているかによります。

しかし、どのような賃金制度になっていたとしても、あまりにも大幅に賃金が減額されるような場合には、職種変更にともなう著しい不利益がある、として配転命令は無効とされる場合もあります。

 

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Step2 職場の変更(転勤)

「労働契約で勤務地を限定して」雇用されている場合

 勤務地限定で雇用されているため、原則として労働者の同意がなければ、使用者は転勤を命ずることはできません。労働者は配転命令を拒否することもできます。

 

「労働契約で勤務地が限定されていない」 &「就業規則や労働協約に配転を命じる旨の規定がある」 &「企業内での慣行上も配転が行われている」場合

 労働者は配転命令に従わなければなりません
  これに従わない場合は、懲戒解雇されてもやむをえないといえるでしょう。

  しかし、配転命令が使用者側の「権利の濫用」と認められる場合には、その命令は無効とされ、労働者はこれを拒否することができます。 転勤命令が「権利の濫用」と認められるかどうかは、転勤命令の業務上の必要性や、それによって労働者が受ける不利益、また、その目的と内容が不当ではないか、など具体的に検討して判断されます。

 

●「権利の濫用」と認められた例

@ 重い病気の家族や常に介護の必要な高齢者などを抱える場合には、その程度によって転勤を拒否するに足る事情があるとその正当性を認められた(神戸地裁姫路支部平成15年11月14日決定)。

A 配転命令に従わないことを理由に懲戒解雇された場合でも、配転命令が無効であるため解雇が無効とされた(大津地裁平成9年7月10日決定)。

B 工場の製造部門の一部の分社化により転勤か退職かを迫って退職させたという事案で、その行為が債務不履行ないし不法行為にあたるとされた(水戸地裁下妻支部平成11年6月15日判決)。

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Step3 出向

出向には、
・在籍出向(出向):籍を出向元の企業に残す
・移籍出向(転籍):籍を出向先に移す  → Step4 転籍へ
の2種類があります。 まず、命じられた業務命令が、出向なのか転籍なのかをきちんと確認してください。 在籍出向(以下、出向と呼びます)は、出向元の従業員としての資格をもったまま、他の企業で働くことをいいます。
 また、出向者の就業規則は、一般に、身分に関する事項については出向の就業規則が適用され、勤務に関する事項については、出向の就業規則が適用されます。

「就業規則や労働協約に出向根拠がある」 &「その規定にそって出向実績がある」場合

 労働者は出向命令に従わなければなりません。
就業規則に、出向先の範囲、出向期間、身分、賃金、労働時間などの基本的な労働条件が明確に定められていること、および、その就業規則が従業員にあらかじめ周知されていて、過去にその規定にそって出向実績があるような場合には、労働者の包括的な同意があったものとして、本人の個別的な同意は必要ないとされています。

 

「就業規則や労働協約に明確に定められた根拠がない」場合
「復帰する可能性がないような転籍含みの出向」の場合
「出向先の労働条件が大幅に低下する」場合

 労働者に出向を命じるには、本人の個別的な同意が必要とされています。
就業規則には「出向を命じることがある」と簡単な規定だけしかない場合には、出向先での労働条件をはじめ出向期間、出向元への復帰など出向の条件を労働者に告げて、個別的に同意を得なければ、出向命令をだすことはできません。 また、将来、復帰する可能性がないような転籍含みの出向や、出向先の労働条件が大幅に低下する出向の場合は、労働条件の不利益変更になりますので、必ず本人の同意が必要になります。

 

「出向実績がなく新たに出向発令をする」場合
「出向先が関連(グループ)企業以外の取引先、下請会社等である」場合

労働者に出向を命じるには、本人の同意を得ることが望ましいとされています。

 

 

☆★☆ 出向命令が「権利の濫用」にあたるものとして、出向命令そのものが無効になるケース☆★☆

  1. 業務上の必要性のないもの
  2. 合理的な理由のないもの
  3. 家族の病気など家庭の事情により、著しい生活上の不利益を受ける場合
  4. 職種・勤務場所について合理的な予想範囲を著しく超えるもの

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Step4 転籍

転籍は、元会社との雇用契約を解消(退職)し、転籍先との間に新たな雇用契約(再就職)を結んで働くことをいいます。

「通常の転籍」の場合

 労働者の個別的な同意が得られなければ、転籍を命じることはできません。
使用者は、本人が転籍を拒否すれば、転籍の強制はできず、懲戒処分にすることもできません。また、同意しないことを理由に解雇することもできません。 ただし、転籍について労働契約時に包括的な合意がある場合は、同意がなくても可能な場合もありますが、その転籍命令が使用者の「権利の濫用」にあたるようなときは、無効とされます。

 

「会社分割による転籍」の場合

会社の分割に伴い労働者の転籍が行われる場合は、その分割する会社の業務に「主」に従事しているかどうかで、転籍に対する対応が異なります。 >>労働契約継承法

  • (分割業務に「主」に従事している労働者)の場合
    「主」に従事している労働者(パートや契約社員も含む)は個別の同意を得ることなく、転籍させることができます。この場合、労働者から異議の申し出はできません。 しかし、元会社に「残れ」といわれたら異議を申し出ることができます。異議を申し出ると、転籍することができます。
  • (分割業務に「従」に従事している労働者)の場合
    転籍を命じられた場合、労働者は異議の申し出をすることができます。異議を申し出ると、元会社に残ることができます。 しかし、設立会社に「移りたい」という異議の申し出はできません。
  • (分割業務に全く従事していない労働者)の場合
    会社分割の際の対象とはならないので、労働契約承継法の適用はされません。そのため、転籍を命じるには、労働者の個別的な同意を得なければなりません(通常の転籍の場合の手続きが必要です)。

会社分割により転籍する労働者の労働契約は、原則としてそれまでの契約内容がそのまま承継されます。会社分割により労働条件を不利益に変更することはできません。 そのため、複数の会社が合同で新会社を設立する等の場合には、1社に複数の就業規則などが存在することとなります。これを統一するためには、労働者の「不利益変更」とならないようにしなければなりません。変更が必要な場合には労使間の合意が必要です。

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